1990年から旅したヨーロッパのイロイロな街を、写真と文章で紹介していきたいと思います。


by KaZoo

414「オペラに特に興味はなかったけど、この街は何か気になっていたんだ…!」ドイツ、バイロイト

2010年6月9日。ドナウ河畔の古都レーゲンスブルクから、リヒャルト・ワーグナーゆかりの街バイロイトを目指した。バイロイトは前々から行こうと思っていたけど、なぜか訪れなかった街。オペラに興味があるわけではないので、何となく近寄りがたいって感じがして敬遠していたのだろう。

15分とちょっと遅れてバイロイト到着。駅構内でコイン・ロッカーに大きなキャスター付きのリュックを放り込む。普通ならすぐホテル探しなのだけど、祝祭歌劇場が旧市街と反対の方角にあるので、まずは祝祭歌劇場を先に見ていこうと思った。駅前の道を右に行けば祝祭歌劇場がある。

正式には「リヒャルト・ワーグナー・フェスト・シュピールハウス」と言う。1876年ワーグナー自らが音響効果を考えて設計。世界で最高の歌劇場と称賛されている。毎年7月25日から8月28日の音楽祭には、世界中から約10万人のオペラ・ファンが集まるというから凄い。

祝祭歌劇場近辺で面白いモノを発見。道路名がワーグナーの作品にちなんだ名前なのだ。例えば「トリスタン・シュトラーセ」とか「ニーベルンゲン・シュトラーセ」とか「マイスタージンガー・シュトラーセ」とか「ワルキューレン・シュトラーセ」とか「ジークフリート・ワーグナー・アレー」とか。こんな道路標示を見ると、ワーグナー・ファンでなくても小躍りしちゃうのは当然。

劇場右手前の庭園にリヒャルト・ワーグナーの胸像があった。まずは苦虫潰したようなワーグナー先生にご挨拶。劇場前に辿り着いた。入口を探す。できれば内部を見たい。入場料は€3。内部ガイドツアーは『リハーサル等で中止になる場合もあるので要確認』とガイドブックに書いてあった。入口前の看板に「KEINE」の文字を発見。つまり「否」ということ。内部ガイドツアーは中止。まぁ、こんなこともあるさ。

駅に戻る。さぁ、ホテル探しだ。駅の真ん前に1軒あるけど、いくら何でもこれでは手抜き。それに少々高そう。何たって予算は€60±10。節約節約。道路を渡り市庁舎のある方角を目指した。しばらく行くと道沿いに「GASTHOF」の看板。外観はちょっと寂れているけど、とりあえず中に入って聞いてみた。

1階のレストランで、数人の初老と見える男女がビールを飲みながら談笑してた。僕の姿を見ると、女性が立ち上がり笑顔で応対。空室はあるかと、英語で聞くと困ったような顔をした。知っている限りのドイツ語を駆使して、さらに聞く。どうやら部屋は空いている。料金を聞くと€35。悪くない。でも即決はできない。まずは部屋を見てから。部屋を見たいと言うと、2階へ案内してくれた。

ドアを開けて部屋を見た。安いなりには安いなりの理由がある。部屋は狭い。しかもトイレは室外で共用。トイレを見た。トイレット・ペーパーが散乱し、決して快適&清潔と言えない状態。いくら何でもこれでは。しばらく考え込む振りをする。そして振り返り、笑顔で女主人に礼を言って丁重に断った。

その先にもホテルがある。レセプションは2階。リュックを引きずりながら急な階段を上がる。誰もいない。ベルがあるので押した。チーン!余韻が静かな部屋に微かな波を立てる。女主人が現れた。ちょっと不機嫌そう。でもドイツの中年女性は、普段でもこんな顔つきなので慣れている。部屋は空いていた。料金は€42。広くないけど、朝食付きでこの料金なら悪くない。ニコッと笑い「グート!」と言って親指を立てた。

カメラをぶら下げホテルを出た。街の中心は市庁舎のさらに先。バイロイトはブランデンブルク辺境伯の宮廷が置かれた街。バロックやロココ風の建物が残っている。僕はどっちかというと大仰な建物よりも、庶民が暮らす家々のある普通の街並みの方が好きなのだ。

市庁舎前広場に小さな本棚があった。若い男が2人立ち止まって本を読んでいる。ひょっとしたら古本のリサイクル…?読みたい人は読む。いらない人は置いていく。欲しい人は持っていく。それって無駄がなくてイイかもしれない。素直にそう感じた。

城の前まで来た。と言ったって城壁はない。言われなければ、これが「Schloss」だとは到底思えない。城への階段を上がっていくと左手に礼拝堂があった。ドアの上に花をあしらった手書きのポスターと、青と黄色の巡礼者とホタテ貝のプレート。へえ、ここからサンティアゴ・デ・コンポステーラまで巡礼する人がいるんだ…!と驚く。

とりあえず礼拝堂を見学。明るい堂内は、ローズピンクとクリーム色の内壁で包まれていた。主祭壇の聖母子像の背には、輝くばかりの黄金の日輪。2階には天井に届きそうなオルガンのパイプが煌めいている。さりげなく小さな礼拝堂。今まで見てきた世界遺産の教会と違い、心を穏やかにさせてくれる。

城を出て左に行く。向こうにオープン・テラスのあるカフェが集まる四つ角。何か食べたいけど、人が多くてワサワサして落ち着かない。裏道をちょっと行くと、中庭のあるイタリアン・レストランを発見。突然、頭の中はボロネーゼ。中に入って、空いている木陰の席に腰を落ち着ける。注文を取りに来た女性に、ビールとボロネーゼを頼んだ。しばらく待つと、グラスの真ん中に騎士が描かれたバイロイトの地ビールAKTIENが届く。このビール会社は1872年創業だから、そんなに歴史がある訳ではない。

昼食後、ワーグナーが愛妻と暮らした屋敷「ハウス・ヴァーンフリート」を見に行く。少し歩くと壁に「Schinner」というビールの垂れ幕を発見。裏手にビア・ガルテンがある。へぇ〜、ここで作ってるんだ。ま、ビールは別腹(?)って言うし、旅の想い出に飲んでいこうかと考えた。だけどお店は閉店中。あらら…!

何か気になるな、あのビール。そんなことを考えながら歩いていると、右手に瀟洒な屋敷が現れた。門柱から続く並木道の向こうに2階建ての石造りの建物。ハウス・ヴァーンフリートはそんなに大仰な感じではない。近づくと玄関前に胸像があった。見たことのある顔。ワーグナーのパトロンだったルートヴィッヒ2世だ…!建物内部は現在「ワーグナー博物館」。ワーグナーゆかりの品々や楽譜などが展示されている。

建物裏手に回ってみる。裏庭には夫妻の墓があり、墓石の真ん中には紅白のリボンが付いた大きな花輪が飾られていた。ワーグナーは1813年5月22日にライプツィヒで生まれ、1883年2月13日にヴェネツィアで没している。ハウス・ヴァーンフリートの裏庭からホーフガルテンという大きな庭園へ抜けられる。ホーフガルテンはフリードリヒ大王の姉ヴィルヘルミナ皇女が建てた新宮殿から続く庭園だ。

庭園を巡り、新宮殿から再びカフェが集まる四つ角に戻る。辺境伯オペラハウスはこの先にある。ガイドブッに『外観は地味だが、客席と舞台装置の絢爛豪華さには目を見張る』と紹介されている。€5払えば見学できるけど、外観の写真を撮っただけでオシマイ。何となく歩き疲れた。大きなスーパ・ーマーケットでミネラル・ウォーターを買ってホテルに帰る。

夕食時間。駅にちょっと立ち寄る。駅前の5階建てビルの壁に、何体もカラフルなカエル人間のような人形が張り付いていた。面白い。1階に「sushibar」の文字発見。昼頃は全く気が付かなかった。中を覗くと、中国人経営のスシ・バーという感じではない。とりあえず店内に入った。

テーブルには抹茶色のナプキンが置かれ、インテリアは暖色系の仰々しくないモダン・デザイン。雰囲気は悪くない。しばらくすると明るい感じの女性がメニューを持ってきた。メニューは正方形のオレンジ色。表に「lamondi」の店名。とりあえず口に合いそうな物を選ぶ。まずは熱燗。そしてホウレンソウのお浸し。続いてモヤシのごま和え。さらに餃子。だけど餃子と呼ぶには少々問題あり、何となくラザニアに近い。

最後に鉄火巻きと熱燗をもう1本お代わり。結構気持ちよくなっている。勘定をすると€25.80。€50札を出す。すると店の女性が€20札と€5札を返してくれた。それではお釣りが多い。教えてあげると顔を真っ赤にした。僕は€20札だけ取って店を出た。

何とも充実した夕食。腹七分目ではあるけど、これでちょうどいい。気分をよくして再び城のある旧市街へ向かった。例のビア・ガルテンが気になっている。行ってみると、店の電気は点いていた。早速中へ入る。客はいない。でも営業中のようだ。さて、どうしようかと思っていると、奥から若い女性が顔を出した。

「今晩は、ビールを飲みたいんですけど…?」

若い女性は英語に自信がなさそうで、すぐに奥へ引っ込んでしまう。参った。諦めかけていると、眼鏡をかけた30代ぐらいの女性が現れた。

「ビールを飲みたいんですけど…?」

「はい、大丈夫です」

ビールが届く前に店内の写真を数枚撮った。テーブルの上に、今の女性とコック服を着た男の2ショット写真がある。どうやらこの2人で店を切り盛りしているようだ。するとビールを持ってきた女性が嬉しそうな顔で言った。

「私と夫です。この店でビールを造ってるんですよ」

ジョッキになみなみと注がれたビール。泡のキメも細かくてクリーミーだ。ユックリ彼ら夫婦手作りのビールを味わう。まずは鼻で香りから。次に口から喉へ。どっちかというとサッパリ系のピルスナー。腹に溜まる感じではない。これなら何杯も飲めそうだ。愛情のこもったビールを堪能して店を出た。たった1杯では何か勿体ない気もするけど、まぁ、♪これでいいのだ〜♫と思うことにした。

f0360599_07354798.jpg


by 1950-2012 | 2018-07-16 07:36 | ヨーロッパ 旅 紀行 | Comments(0)