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1990年から旅したヨーロッパのイロイロな街を、写真と文章で紹介していきたいと思います。


by KaZoo

490「僕は腹七分目がいいのに、なぜかヨーロッパでは許されない…!」ドイツ、ドナウエッシンゲン

僕はかなり小食で、ちょっと偏食気味なところがある。基本的に大盛りはダメ。脂っこいのも苦手。レバーやウニは完全NG。好き嫌いも少なくない。無理して食べると、寝ている時に吐き気を催してしまうことすらある。2003年春、南ドイツ“黒い森”の中の小さな街、ドナウ河の源流と言われるドナウエッシンゲンを再訪した時がそうだった。

最初にドナウエッシンゲンを訪れたのは1990年春。僕にとっては、記念すべき初のドイツ(同時に、これが初のヨーロッパ)の旅だった。その時に、僕はいつものいい加減な「まぁ、いいっかぁ…」が出て、ドナウ河が始まる地点を見忘れた。言ってみれば、その地点こそがドナウ河の源流。見ておくべきだった。そして旅を終えて帰国。すると「あぁ、あの時行っておけばよかったなぁ…」と後悔する。

ということでリベンジ。2003年春、ドナウエシンゲン再訪。今度はドナウ河が始まる地点、つまりブリガッハ川とブレーク川が合流する場所を絶対に見るつもりだった。ホテルはガイドブックを見てFAXで予約。今ならメールかホテルのサイトで簡単にできるけど、当時の僕はMac.を使いこなせてなかった。

予約したホテルはOchsenオクセン。英語で言えば「OX」雄牛。旅を始めて4日目。体はちょっとヨーロッパに慣れてきたけど、少々疲れがたまり始めていた頃。ヨーロッパ到着後、春とはいえ夏のように日差しがきつく、汗をタップリかく日々が続いていた。ホテルにチェック・イン後、早速例の2つの川が合流する地点を目指す。ここまで来るのに13年もかけてしまった。

合流地点にはフライフィッシングをする人がいた。僕が到着したその瞬間、タイミングを合わせたかのようにフィッシュ・オン。きっとあの魚は、シューベルトが作曲したピアノ五重奏曲イ短調『鱒』のブラウン・トラウトに違いない。なぁんて勝手に想像してほくそ笑む。ということでドナウエッシンゲン再訪のミッションは、無事に完了した。

ウロウロと街を歩きながらホテルに戻る。思ったよりも疲れていた。部屋に入ってベッドに横たわると、足の筋肉がジワジワし始める。日本にいる時はあまり歩かないから、旅に出ると必要以上に歩いて足に疲れを感じてしまうようだ。まだ旅は始まったばかり。足に湿布薬を貼るほどではないけど注意が必要だ。ここのところ、旅も後半になると筋肉痛がひどくなる。

エアコンなんてない部屋には、モヤ〜ッとした重たい空気が淀んでいた。早速窓の取っ手を真横にし、縦長の窓を全開する。レースのカーテンが踊りだし、涼しい空気がファーッと部屋に流れ込む。おぉ、快適〜!汗ばんでいたのでシャワーを浴びる。すかさず気分がリフレッシュ。途端に喉が渇いて、冷たいビールが欲しくなる。

1階のレセプションまで下りて「ビールが欲しい」と言うと、若者が「1.5ユーロです」と言った。1.5ユーロ渡すと、若者が自動販売機にコインをガチャコンと入れてビールを取り出した。ビールは以前来た時にも飲んだ「フュルステンベルク」というブランド。この街特産の地ビールだ。ちなみにフュルステンベルクは、この周辺を治めていた領主の名前だったと思う。フュルステンベルク家の敷地内には、コンコンと水が湧き出る「ドナウの泉」があり、それがドナウの源流だと言う人々もいる。

部屋に戻って、ビールを飲みながらテレビを見る。TVでは自転車のロード・レースを中継していた。他のチャンネルではサッカーの特集。ベッドに横になって見ていたら、そのままZZZZZ…居眠りしてしまう。やっぱり疲れていたのだ。目覚めると、すでに午後8時過ぎ。夕飯にはちょっと遅い時間だった。ホテルを出て、レストランを探し歩くのも億劫だと感じた。ホテルのレストランがまだ開いている。ということで、たまには宿泊先のレストランで食事をするのもいいだろうと考えた。

レストランのドアを開ける。客の数人がギョッとした顔で僕を見た。確かに田舎町の小さなホテルのレストランに、ちょっと怪しげなモンゴリアンのオッサンが入ってきたのだ。多少驚かれてもしかたがない。それにこの時、アジア各地ではSARS騒動が起こり、こっちのTVでも連日ニュースになっていた。彼らが驚いたのは、きっとそのせいだったのかもしれない。もしかして僕がマスクなどしていたら、驚きはもっとスゴいものになっていたかもしれない。

空いている席に腰掛けた。メニューを手に取る。予想していた通り表記はドイツ語。とりあえず味わいとか調理方法が分かっている料理を頼むしかない。ドイツ語で「Suppe」はスープ。メニューにハンガリーのグャーシュ・スープがあった。それなら味が大体分かる。以前ブダペストで食べているから大丈夫。ということで、まずはグャーシュ・スープを頼んだ。

それ以外、メニューにある料理は何だか全く分からない。何たってチンプンカンプンのドイツ語で、しかも読みにくい手書きのメニューだ。とりあえず野菜サラダも追加。サラダならどうにか食べられる。後はパンでもかじっていれば、僕の小食の腹には充分な量になると思う。

グャーシュ・スープには牛肉が入っていた。ホテルの名前は「オクセン」つまり雄牛。牛肉が入っていてもおかしくない。できれば控えめに小さいのが2〜3切れでよかったのに、スープには大振りなのが10切れ近くも入っていた。しかも、よく煮込まれ固くなっていた。僕は牛肉の塊を、何度も何度も顎が疲れるまで咀嚼し、ワインと共に勢いよく胃に流し込まなければならなかった。これは僕にとって苦行難行だった。

その夜のこと。限度量を超えた牛肉を食べたせいか、消化が悪くて胃の中がムカムカしていた。すると急に吐きそうになる。嘔吐しそうになった瞬間、僕は図らずも息を吸い込みそうになった。やばい!まずい!危うく肺に嘔吐物を吸い込むところだ。

すぐさま飛び起き、急いでトイレに駆け込む。そして、胃に溜まったものを便器に吐き出す。落ち着いたところで、ミネラル・ウォーターを飲んで胃洗浄する。ふぅ〜!思わずため息が出る。しばらくすると、また吐き気が襲ってくる。吐き出しては、ミネラル・ウォーターを飲んでまた胃洗浄。その繰り返しが何度か続く。いい年こいて、何をしてるんだか…?哀しくなる。

やっぱりダメだ。合わない食べ物は、やはり僕の胃には合わない。もう少し注意しなければいけない。旅先で寝ている間に、自分の嘔吐物で「窒息死」なんて情けないことになってしまうかもしれない。気を取り直して、温くなったミネラル・ウォーターを飲む。水はスルスルーと、空っぽの胃袋へ気持ちよく流れ落ちる。はぁ〜、参った…!思わず溜息が出る。

考えてみれば旅はまだ始まったばかり。これから先、何を食べながら旅を続けたらいいのか…?そんなことを考えると寝つかれなくなる。点けっぱなしのTVでは、ドイツ人らしい若い娘が裸になって踊っていた。おやおや…!それは有料番組でなく、朝の5時までやっている「Live 9」という普通の番組。昼間は昼間で、深夜とは全然違うマジメな番組を放送している。夜中はオッサンのための「裸天国」になるらしい。

ヌードとヌードの合間にCMが流れる。携帯電話の電話番号の連呼と、妙に妖しく色っぽいお姐さんたちが画面に向かって舌なめずりしながら誘いかけてくる。たぶんテレホン・セックスのCMなのだろう。ヨーロッパはセックスに関して、何ともおおらかで肉欲っぽくて挑発的だ。日本とは大違いで、食事同様量感タップリで繊細さに欠けるように感じる。やっぱり、和食がいい。日本の女性がいい。

セクシーCMの電話番号は「0906」で始まる。ちょっと驚いた。日本で「090」で始まるのは携帯電話番号だ。似ている。といって、ドイツやオーストリア国内でどこかのスケベなオッサンがかけた電話が、日本の誰かの携帯電話につながるわけは絶対にない。なぁんて、どうでもいいことを考えてしまう。旅の始まり、こんな空しい時差ボケがしばらく続くのがちょっとばかり辛い。
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by 1950-2012 | 2019-03-13 20:19 | ヨーロッパ 旅 紀行 | Comments(0)